
――前著『リッツ・カールトンで学んだ仕事でいちばん大事なこと』は、いわゆる「リッツ・ブーム」の火付け役になりました。このようにリッツが注目され、支持される理由をどうお考えですか。
そうですね。私が営業支配人として在籍していたのは、開業前の1996年から2002年までですが、そのときの経験から言えば、やはり、このホテルの強みは、類い希な、質の高いサービスにあると思います。そこが注目されるゆえんなんでしょうね。
――お客様の忘れ物を、スタッフが新幹線に乗って東京まで届けに行ったという伝説的なエピソードがあるくらいです。
ええ、こういった伝説は、「ミスティーク」(神秘性)とも評されますが、それこそ挙げていけば切りがありません。なぜ切りがないかと言えば、当たり前のことなのですが、スタッフ全員が伝説をつくれる資質を身につけているからです。そして、その資質を身につけるための仕組みが「クレド」なのです。 |
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| リッツ・カールトンで学んだ仕事でいちばん大事なこと |
――「信条」「哲学」ですね。
はい。この「クレド」は、「クレドカード」というカードに書かれ、全従業員が常に携帯しています。書いてあることは一見普通です。「お客様の快適さを実現する」なんてホテルであれば当然やるべきことのように思われます。ですが、これを、具体的にどう日常の仕事に落とし込んでいくかを、スタッフそれぞれが日々考え、実行していくことが求められるのです。「快適さ」とはどういうことだろうか。暖房の温度だろうか。挨拶の仕方だろうか。いやそもそもお客様1人ひとりで「快適さ」は違うはずだ・・・このように「クレド」を各スタッフが徹底的に現場で応用していくことで、マニュアルを超えたサービスを実現しているのです。

――今、マニュアルを超えたサービスとありましたが、「最高のサービス」のあり方とはどういうものでしょうか。
| やはり、お客様に感動していただくまでのサービスでなければならないと思います。満足していただくだけでは不十分です。今回の『ホスピタリティの教科書』にも書いていますが、お客様は日々消費体験を積み、非常に「賢く」なっています。ちょっとやそっとのサービスでは、感動どころか、満足さえしてくれません。ハードルは非常に高いです。だからこそ、そのようなお客様を感動させるサービスをする。これがプロのサービスです。プロというのは、「そこまでやっていただけるんですか」と言われる存在だと思うのですね。 |
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――この最高のサービスを実現するために必要なものを教えてください。
心くばりであり、まごころだと思います。心くばりとは、文字通り相手のことを心配するわけです。「暑さがお客様の仕事に支障を来たしていないだろうか。冷たいお茶を出せば、少しくつろいでいただけて、仕事もはかどるのではないか」と考え、行動します。そこにあるのは相手に対する愛情、まごころです。当たり前のことですが、非常に大切であり、当たり前ゆえに奥深いものだと思います。

――先ほどから、サービスという言葉を使っているわけですが、この心くばりというものは、業種を問わず、必要なものだと思います。
私も、そう思います。どのような仕事に携わるにしても、私たちの前には、お客様、上司、部下、先輩、後輩、取引先など、常に人がいます。このとき、お互いの人間関係がうまくいかなければ、その仕事はうまくいきませんよね。相手に心を開き、信頼を寄せてもらうために何をすればいいか。やはりこちらが、心をくばることにあるのではないでしょうか。これが仕事の基本だと思います。
――では、最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。
最近私は、心くばりと同様に、5つの感謝を持ってくださいということをお話しています。お客様への感謝、職場の仲間への感謝、取引先への感謝、地域社会への感謝、そして家族への感謝です。感謝の心がなければ、愛情は生まれず、心くばりは生まれません。心くばりがなければ、ホスピタリティ、まごころのおもてなしは生まれません。感謝の気持ちが私たちの仕事をよりよいものへ導いてくれると信じています。
――ありがとうございました。
林田正光(はやしだ・まさみつ)
1945年熊本県生まれ。藤田観光株式会社太閤園販売促進支配人、関西地区顧客部長を経て、1996年ザ・リッツ・カールトン大阪入社、営業支配人、営業統括支配人を務める。2002年同社を退社。以後、京都全日空ホテル社長兼総支配人、彦根キャッスルホテル取締役社長兼総支配人を歴任。HAYASHIDA・CS総研会長(CEO)。日本CS・ホスピタリティ協会理事長。CS・ホスピタリティ総合プロデューサー。著書に『リッツ・カールトンで学んだ仕事でいちばん大事なこと』『ホスピタリティの教科書』など。
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