【著者のコメント】
仏の教えを知ると、心が「すーっ」と軽くなる
私たちは毎日、悩みながら生きています。
その悩みは多種多様。
数時間、もしくは翌朝、起きたら忘れてしまう程度の些細な心のひっかかり。
一週間したら「つまらないことでクヨクヨしていたな」とバカらしくなる悩み。
何年にもわたって、悪夢にうなされるようなトラウマ。
人類共通の普遍的ともいえる難問≠、自分のこととして抱えこんでしまった苦悩――などなど。
「朝、起きるのがイヤ」、「朝食になにを食べようか」といった、ごく個人的で小さなこと。「人間関係でうまくいかない、思いが伝わらない」など人とのつながり、しがらみが生み出す悩み。
そして、老いや死への不安、人生の意味などの悩みまで、きりがありません。
仏教の祖、お釈迦さまも私たちと同じように、悲しみ、苦しみ、悩んだ末、問題を解決するために、家族も王子という位も捨てて出家しました。
世間から離れた出世間の立場から、静かに自分の悩みとその原因を分析し、解決の方法を求めたのです。
仏教ではそれらの問題を、「ご都合通りにならないこと」とひとまとめにして「苦」と呼び、八つの苦に分類しました。四苦八苦の八苦です(四苦は八苦の中の代表格の四つなので、八苦の中に入ります)。
生:生まれること。地代や地域や親を本人が選べないという点でご都合通りではありません。
老:年をとることもご都合通りにはいきません。
病:自分の都合で病気になったり、治したりすることはできません。
死:自然から与えられた寿命を自分で決めることはできません。
ここまでが四苦です。
愛別離苦:愛するものと離れなければならない苦しみ。
怨憎会苦:怨み、憎んでいるものと出合わなければならない苦しみ。
求不得苦:求めても得られない苦しみ。
五陰盛苦:モノを感じられるゆえの苦しみ。
これで合計八苦。
どんな悩みも苦しみも、右の八つの苦に分類できてしまうのですが、だからといって、「世の中四苦八苦だね」のひと言で解決するようなものでもありません。
お釈迦さまが、これらの難問を解決した方法が「悟り」でした。悟りを開くことで、どんな悩みも解決できて、心晴々として、静寂な境地に入ることができるとしたのです。
残念ながら私は悟っていないので、「これ一つですべて解決」などというオールマイティな答えをあなたにお伝えすることはできません。
しかし、どう考えればいいのかという道筋は、仏教の中にすでに示されています。その道筋こそが、心やすらかな境地(悟り)への修行の過程なのだと思います。
本書は、東京は下町・小岩の小さなお寺の和尚である私が、皆さんの質問や相談にお答えして、いくらかでも悩みを「すーっ」と消していただくお手伝いができたらと思い、仏教を土台に、筆を進めました。
多くの悩みは、実は私たちの「心のあり方」そのものに根ざしています。
そして、仏教の基本的な教え(考え方)のスタンスは、まさにこの「心のあり方」にあります。
本書をお読みいただき、仏教の教えを、日々の暮らしの中で応用していただければ、悩むことが少なくなるでしょう。
そして、その考え方は、普通なら悩むところを、悩まずに笑顔で生きていく予防効果絶大であることもつけ加えさせていただいて……。
さあ、はじまり、はじまりでございます。
名取芳彦
(「はじめに」より) |